・予防歯科を含め歯科医学の基本は正しいか:何故市民はむし歯で苦労するのか

 歯科治療は信頼性に乏しいといわれている。信頼性を高めるために、歯科の研究者は悪戦苦闘してきたが、満足のいく解決策はえられていない。歯科医療の原点に解決できない原因が存在していないか?
 歯科医師にむし歯の治療を任せる以前に、歯や骨の組織が塩基性リン酸カルシウムの結晶(ヒドロキシアパタイト:HAP)で構成されているために、酸性の環境では弱いことを認識する必要がある。これは歯科医師や整形外科医の問題である前に、化学の常識である。これが、血液を酸性にしない日常生活が骨粗しょう症を予防する生活態度であり、口腔内を酸性にせず、むし歯に罹らないようにする日常的注意点である。健常であれば自分の力で血液が酸性になる心配はない。歯には血管がないので、血液の力でむし歯を予防することは期待できない。そのために、私達は歯ブラシを使って口の中を清潔にすることが必要なのである。歯ブラシで歯を磨くことは常識的であるが、乳酸が作られる場所は歯の表面だけではなく、口の中全体にあることを認識して欲しい。唾液の力に頼るよりも、口の中を清潔にして、口腔内に生息する乳酸産生菌の数を減らし、口の中に付着している食べ物の粕が常在菌の餌となり乳酸に転換されないようにすることが肝要である。
 歯科医師教育の初めに、歯を上手く削る技術教育としてエナメル質を切削するトレーニングが強く求められているが、エナメル質を削り取っても身体に悪影響はないのか、考え直す必要がある。皮膚は私達の身体を守る防護壁の働きをしている。エナメル質は削り取っても良い不必要な組織か。歯科医師は最初に受けるトレーニングで、エナメル質を削り落としても実害はないと誤解しているように思う。エナメル質を切削することが二次カリエスの原因ではないか。エナメル質は歯にとってはそのイノチを守る大切な防護壁なのである。これは歯科医師ばかりでなく、歯を使って生きている人間一人一人にとって大切な組織であることを忘れてはならない。エナメル質を削り落としてしまうと、その次には歯を失う運命が待っており、そして最終的に不愉快な入れ歯のお世話になるか、高額の支払いを請求されるインプラントが待っている。
 エナメル質が硬いのは、防護壁としての機能を発揮して歯を一生使い続けられるようにした、自然の恵みなのである。戦闘でも最強の防衛線を撃破すれば勝利は間違いない。これと同じように最強の防衛線、エナメル質を失った歯は口腔内では負けが決定的である(抜歯になる)。
 むし歯を治してもらえない患者予備群の人々は勿論、歯の健康維持のプロであるべき歯科医師もエナメル質の大切さを学び、一生歯で苦労しない人生を送って欲しいと願う。
 歯科医師は、削る名人よりも、むし歯予防の達人であって欲しい。