・歯科医療は偽であるか否か

 昨年の流行漢字は「偽」であった。あまり好ましい漢字ではない。私達の周りには「偽」は存在しないか。歯科医師免許をお持ちの先生方には少し厳しい文章であるがお許しいただきたい。国が認めた血液製剤「フィブリノーゲン」によりC型肝炎ウィールスに感染された患者さん達は本当にお気の毒である。厚生労働政策を誤ると、国民に被害が及ぶのである。年金や労働者派遣でも同じ役所が過ちを犯している。福田首相は国民に侘びを言っている。官僚機構がもつ問題であるようだ。
 さて、今日は、厚生労働省が責任を持つ歯科医療に「偽」があり、国民(人類)に健康被害を与えている事実はないか、化学屋の中林が苦言を申し上げたい。むし歯は感染症か。大学で教わったから真実であると信じたいが・・・今世界は人々がH5N1型という新型インフルエンザウィルスに感染しないか恐々としている。「感染」をどうやって防ぐか確実な対策がないためである。むし歯予防も同じレベルであろうか。ストレプトコッカスミュータンス連鎖球菌はどこに住んでいるか。歯(エナメル質や象牙質)に生息しているか。口腔内に生息しているのである。鳥インフルエンザウィルスは地球上にいるが、それが人に感染する危険が高まっているから問題なのである。口腔内の常在菌に感染しているという表現は、庶民を不安にさせるだけではなかろうか。肺結核も薬物耐性菌の出現で、注意が叫ばれている。全ての生物は環境適応力を持っているが、一番弱いのはヒトであろう。正しい科学で説明したい。
 中林は歯の組成を正しく理解し、う蝕罹患を化学で理解できるように説明したい。化学は公害を撒き散らす悪い科学ではない。化学は新しい文明を生み出し、生活を豊かにする学問である。ヒドロキシアパタイト(HAP)と言う、塩基性のリン酸カルシウムの結晶は骨と歯に大切な化学物質である。これが失われると骨粗しょう症とむし歯になる。これを防ぐにはカルシウム分を多く含む食品を日常的に摂取して、血液を健常に保つ必要がある。ここでカルシウム(Ca)と呼んで欲しくない。食塩のことをナトリウム(Na)というと間違いである。血液から赤血球、白血球、血小板などの細胞がろ過された血漿と唾液は似た組成である。血液と唾液の緩衝作用は似ている。血液が酸性に傾くことは病気であり、中性に保つ必要がある。このとき役立つのが骨中のHAPである。継続的にHAPが失われると骨粗しょう症になる危険がある。口腔内常在菌ストレプトコッカスミュータンス連鎖球菌が食べ物の粕を餌として摂取し、代謝産物として乳酸を作りHAPを分解するために、むし歯に冒されるのである。これは酸(乳酸)と塩基(HAP)の(中学で学んだ)中和反応である。歯の表面で乳酸を中和して、HAPは分解され、むし歯になる。中性の水では歯は溶けていかない。
 エナメル質は歯のイノチを守る大切な組織である。このエナメル質に穴が開くと歯は生きていけない。1/3以上の皮膚が火傷を負うとイノチが危険になるのと同じである。エナメル質に穴を開けないためには、口腔内に生息する乳酸産生菌の数を減らすと同時に、彼らに餌を与えず(兵糧攻め)乳酸の産生量をゼロに近くすることが大切である。これには歯ブラシで歯を磨くのではなく、口の中をきれいにする必要がある。酸性の雰囲気では唾液は歯石(中性のリン酸カルシウム)しか作らない。歯石の堆積は歯周病の原因を生み出す。人工腎臓・心臓のように腎臓や心臓が治癒できない疾患に冒されたとき、技術的(科学の力を借りて)に人のイノチを永らえるために使う人工臓器だが、人工エナメル質を活用すると、エナメル質に欠陥を生じたとき、その歯を失うことなく、その歯のイノチを永らえることができる。これはTOHの理事達の努力で生み出された研究成果である。これは「偽の治癒」かもわからないが、自然が与えてくれなかった歯の傷の治癒が不可能であるので、「偽」ではなく、命を救うためのアシストと考えて欲しい。
 修復物が脱落するから接着が必須なのではなく、歯のHAPが無防備なために乳酸に分解されて、むし歯になることを防ぐために、人工エナメル質を作ることが有効な手段なのである。詰め物やかぶせものが短期間のうちに脱落するのは偽の学説を信じてきたためで、脱灰象牙質が乳酸を透過する性質のために、支台歯が乳酸の辺縁漏洩で脱灰され、隙間が大きくなり、脱落していたのである。染料を使ったマイクロリーケージ試験は修復された歯と修復物の界面に脱灰象牙質があり、ここを乳酸が透過して支台歯を解かしていたのである。同じようにモノマーの毒性のためと説明された歯髄炎も、微生物の感染により歯のイノチが奪われていたのである。
 人工エナメル質は皆さんの仲間が生み出した科学である。理想的には(口の中を清潔に保てば)人工エナメル質は不要である。歯は皆さんの知識で一生使えるようにご先祖様は作ってくださったことに感謝するべきである。
 酸性雨が地球環境を破壊したのと同じように、口腔内を酸性にすることは自分の口の中に公害を持ち込むのと同じである。むし歯は、自分の努力で撲滅できる。歯科医の先生方も、むし歯の成因を勉強し直して、歯の疾患で地球の温暖化防止に貢献して頂きたく思う。歯と口の健康を守るには歯ブラシで口の中をきれいにすることである。人込みに出た後、手洗い・うがいをすることがインフルエンザをはじめ、色々な病気の予防につながると同じことである。