S.ミュータンス菌など乳酸を口の中で作り出す微生物が産出する酸によりエナメル質が脱灰されますが、エナメル質をきれいにして寝ると、寝ている間に目に見えない小さなエナメル質のう蝕は、唾液によりヒドロキシアパタイトが再結晶化され、う蝕罹患部は修復されます。これは、唾液の大変重要な役割です。唾液にはこのようなう蝕の治癒力があるのです。これを引き出すのも皆さんの生活習慣です。
一部に唾液の緩衝能(緩衝作用)により乳酸の脱灰作用が無くなるという誤解があるようですが、たとえ唾液の緩衝作用でpHは下がらなくても乳酸は唾液に溶けており、ヒドロキシアパタイトと反応して、エナメル質が脱灰され、う蝕を作り出します。食べ物のかすを餌に口の中でS.ミュータンスに乳酸を作らせないことが、う蝕の防止には必須です。歯科医師が食後のブラッシングを強く勧める最大の理由は、この点にあります。
口の中で乳酸が作られていることなど、誰も意識はありませんが、エナメル質は酸によって解かされ、う蝕に罹患するという事実を学び、エナメル質を乳酸に触れさせなくする、即ち乳酸を口の中で作らせないことが最高のう蝕罹患防止策です。むし歯が出来る原因は、化学で教わった中和反応によるのです。中和反応の酸は乳酸で、塩基はヒドロキシアパタイトです。
歯石:スケーリングで除去しなければならないほど、歯石(基はプラークと唾液)が硬くなる前に、歯周組織やエナメル質に傷をつけないように柔らかい歯石を除去することが大切です。これには歯科衛生士さんの協力を頼みましょう(定期的健診を少なくとも3〜6ヶ月に一回は受けましょう)。
プラークは、S.ミュータンス菌が食べ物のカスを原料に作るねばねばした歯にくっつきやすい物質です。この中で、乳酸が作り出されるので、唾液からヒドロキシアパタイトの析出*は期待できず、乳酸では解けない中性のリン酸カルシウムが析出して、次第にプラークは硬い歯石に変化していきます。歯周病予防のために、歯石をスケーラーでがりがり取りのぞこうとすると、エナメル質に傷が付き、治すことのできない象牙質う蝕に罹患する危険が高まるので、プラークが硬い歯石に成長する前に、衛生士さんの協力を得て早めにプラークを除去することが、自分で歯を守る知恵でしょう。どうやら、歯科医師と歯科衛生士は歯石を作らない生活習慣を自分で体得している可能性が強く、彼らは余り歯周病に罹患しないようです。このコツを盗みましょう。
*唾液からヒドロキシアパタイトが析出するにはアルカリ性の雰囲気が必要で、酸性雰囲気では塩基性のヒドロキシアパタイトは生成されません。口の中を酸性にしておくと、むし歯になりやすいことも理解できますね。
中林は、国民の健康維持のために、各小学校に看護士、保健婦ばかりでなく、歯科衛生士を配置することも大切であると思っています。 |