安田理事長のエッセー「歯科医 つれづれ記」(読売新聞夕刊)が掲載されました。
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【歯科医 つれづれ記】
脅迫型勧告「フロスか死か」
以前、この欄で紹介した「ハミガキ王子」、おかげさまで多くの方からお褒めの言葉を頂いた。光栄なことに「あれ以来、10分間の『ながら磨き』を励行しています」などと言って下さる方もいた。こうなれば、さらに歯と口の健康情報を、分かりやすく提供しなくてはと考えている。
さて、私たちハミガキ王子のライバル?である「ハンカチ王子」と「ハニカミ王子」はともに、もはや王子の愛称さえ捨てて、それぞれの分野で着実に階段を一歩上がり、ますます存在感を増している。「さすが王子たちよ!」と賛辞を送るものの、う〜ん、こうなればわがハミガキ王子も、さらにグレードアップを図る必要がある。
「なに、10分間歯を磨いても、まだ足りないのか?」とうんざりする方も多いと思うが、少しだけ説明をさせて頂きたい。
むし歯と歯周病、これはどちらも口の中にいる細菌の固まり(プラーク)が関係している。だから、予防するにはこのプラークを徹底的に取り除くことが大切と、10分間の「ながら磨き」をお薦めした。しかし、歯がきれいに並び、さらに歯茎が歯と歯の間をピッチリと埋めている20歳代前半では完璧なのだが、歯の隙間が目立ち始める30歳にでもなれば、そろそろ別の工夫も必要になってくる。
それが、糸楊枝とも呼ばれているデンタルフロス、爪楊枝の先に毛が生えたような歯間ブラシなど、歯の間の清掃用具の使用である。
つまり、歯と歯の間の接触がゆるんだり、隙間が出来たりすると、食物のカスが入り込み、普通の歯ブラシだけでは取りきれない。アメリカでは「フロスか死か」などという大げさなキャッチフレーズで、国民にデンタルフロスの使用を促している。フロスを使わないと歯と歯の間の細菌が取りきれないで、歯周病になり、心臓疾患や肺の病気にもつながりますよという、私は好きではないのだが、いわば脅かし型の勧告である。
現代のシンデレラ物語として話題となった90年代の映画「プリティ・ウーマン」、その中で、ジュリア・ロバーツ扮する主人公が食後にフロスを使用するシーンがあった。アメリカではこれほどフロスが普及しているのだ、と感心したのを覚えている。
歯間ブラシとフロスの効果は、いろいろなところで報告されているが、間違いなくプラークがよく取れる。フロスは歯と歯が接触している部分、歯間ブラシはその名の通り、歯と歯の間のプラークを取るのに適しているようだ。両方使用するのが一番いいが、どちらか片方でも使う習慣を付けるとよいだろう。
弘法は筆を選ばず? いやいや優れた調理人は何種類もの包丁を使い分けると言う。王子も道具を選んで、しっかりと予防を行うのがよいのでは?
(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長、次回は2月15日)
| プロフィール |
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安田 登 やすだ・のぼる
1969年東京医科歯科大卒。パリ大学留学、第一生命日比谷診療所、東京医科歯科大臨床教授を経て東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。 |
(2008年1月25日 読売新聞) |