安田理事長のエッセー「歯科医 つれづれ記」(読売新聞夕刊)が掲載されました。
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【歯科医 つれづれ記】
舌も清掃して息さわやか
「阿吽(あうん)の呼吸」という言葉がある。まあ正式な語源はともかくとして、もの言わずともお互い自然と相手の心がわかることと理解されている。
私たちの年代は相手の気持ちを察知するというのは美徳であり、人間関係を円滑に保つための大切な芸の一つとされていた。
「男は黙って……」とか、「俺(おれ)の背中を見ろ……」なんていう言葉も自然と通用した時代である。
ところが、昨今、こんな話はほとんど通じない。「ちゃんと言ってくれなきゃ分からないじゃないですか」などと言われてしまう。多民族からなる欧米先進国では、はっきりと意思を伝えないと分かってもらえないし、自分の意見をはっきりと言えない人は、価値のない人のようにとらえられる。「阿吽の呼吸」なんぞ望むべくもない。
対話が必要となれば、相手に好印象を与える努力も大切だ。口臭など振りまいていては、話にもならない。たばこの吸いすぎによるヤニ臭さ、二日酔いのアルコール臭、餃子(ぎょうざ)食べ過ぎのニンニク臭などは論外だが、エチケットの一つとしてさわやかな息を保ちたい。
口臭の原因は、特別な内臓疾患の場合を除けば、多くは食べ物のカスと、それらに群がる細菌の仕業と考えた方がよい。つまり、口の中を丁寧に清掃しない、あるいは出来ない結果として起こる。食べ物の残りカスに群がる細菌たちは、むし歯にも、歯周病にも、さらには口臭の原因にもなっている。
そうなればやはり歯磨きが大切なのだが、もう一つ、舌苔(ぜつたい)と呼ばれる、舌の表面に無数にある溝に付く、白色の汚れを取り除かなくてはならない。その中身はむし歯や歯周病の原因となるプラーク(細菌の固まり)と同じなので、歯の周りだけを掃除しても口臭は治まらない。一生懸命歯磨きに励んでいるのに、口臭がなくならないと言う人は舌の上を掃除することをお薦めする。幸い、舌ブラシとか、舌クリーナーとか呼ばれるものが市販されているので、試してみるのもよいだろう。
また、最近では口臭に対する検査機器も発達して、かなりの精度で原因が判別できる。ひとりで悩んでいないで歯科医院を訪れて調べてもらうのがよい。大学病院でも、「息さわやか外来」とか、「ブレスケア」とかきれいなネーミングがされ、気軽に行けるようになっている。ちなみに口臭予防サプリメントなるものが数多く市販されているが、歯科医から言わせれば、こういうものに頼るより歯科医院における清掃と、日常の手入れの方がズーッと大切である。もっと効果的なのは恋人ができるか、木村拓哉君なんかに、「歯がきれいな子って、いいよね」なんていって頂くことなのですが……。
(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長、次回は28日)
| プロフィール |
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安田 登 やすだ・のぼる
1969年東京医科歯科大卒。パリ大学留学、第一生命日比谷診療所、東京医科歯科大臨床教授を経て東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。 |
(2007年12月14日 読売新聞) |