安田理事長のエッセー「歯科医 つれづれ記」(読売新聞夕刊)が掲載されました。今回は象牙質知覚過敏の話です。
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【歯科医 つれづれ記】
猛暑で売れた 知覚過敏歯磨き 象牙質知覚過敏症が増えている。どんな病気かはよく分からないが、テレビのCMでも盛んに連呼しているから、「チカクカビン」という言葉は聞いたことがあるという人も多いだろう。
一昔前のワープロだと「近く花瓶」などと変換されて、私たち歯科医を煩わせたものだ。
象牙質知覚過敏症とは、歯ぎしりや誤った歯磨きで歯の一番外側にあるエナメル質が失われ、表面に露出した象牙質に熱いものや、冷たいものが触れると、象牙質を通じて神経にまで刺激が伝わり痛みを生じるものである。
むし歯でもないのに歯がしみる場合や、ぬるま湯でなければ口をすすぐこともできないなどと言う人は、知覚過敏症を疑った方がよい。歯周病で歯茎が下がって、歯根が露出した場合もしみることが多い。楽しみにしている湯上がりのビールも、いきなり飛び上がるほどの痛さでは、湯冷めならぬ興ざめすることは間違いない。
この病気、頭痛、腰痛などと同じで、言うならば症状そのものが病名になっていて、原因も多岐にわたっている。ストレスもその一つと考えられ、現代のストレス社会では、知らないうちに歯を食いしばったり、歯ぎしりをしたりすることが多いので、知覚過敏を生じる。
せいぜい仕事中はリラックスして、上下の歯がぶつからないように意識するのがよい。就寝中に歯ぎしりをする人は、歯科医院でマウスピースを作ってもらうことを勧める。
最近は、歯の白さを求めてホワイトニングを希望する患者さんが多い。目に見えない表面の傷や割れ目に汚れが入ると、歯は何となく黄ばんで、汚れてくる。これを漂白剤で溶かし出し、歯本来の白さを取り戻すのがホワイトニングである。しかし、このホワイトニングを行うと知覚過敏を生じることがある。汚れで詰まっていた亀裂がキレイになれば、空気も液体もスイスイ通りやすくなって、しみるようになると考えればよい。白さを求めれば、しみることも覚悟の上と承知願いたい。
どんな注意をしていても、象牙質知覚過敏症になってしまったら、最初に専用の歯磨き剤を試してみる、それでも続くようならば歯科医院に行って適切な処置をしてもらう。それも、いきなり神経を抜くなんてことをしないで、歯に優しい処置からお願いするのがよいだろう。
今夏はご承知の猛暑で知覚過敏専用の歯磨き剤が売れたらしい。にわかには信じられない話だったが、実際にそうだったらしい。猛暑だから冷たいものが食べたくなる。冷たいものを食べれば歯にしみるので、専用の歯磨き剤が必要というわけだ。風が吹くと桶(おけ)屋が儲(もう)かるの類(たぐい)ですね。(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長、次回は来月9日)
| プロフィール |
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安田 登 やすだ・のぼる
1969年東京医科歯科大卒。パリ大学留学、第一生命日比谷診療所、東京医科歯科大臨床教授を経て東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。 |
(2007年10月26日 読売新聞) |