安田理事長の夕刊読売新聞のエッセー、「歯科医 つれづれ記」は6回目を迎えました。今回からトピックス欄で直接見ることが出来ます。もちろん従来どおりオンライン・ジャーナルでも見ることが出来ます。
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【歯科医 つれづれ記】
長嶋型か ジョーダン型か 熱闘甲子園、プロ野球、メジャーリーグと、相変わらず日本人の胸を熱くするのが野球である。かくいう私も子供の頃(ころ)は夕方暗くなるまで、近所の原っぱでボール遊びをしていた。大人になってからはもっぱら野球観戦であったが、私の時代は間違いなく、王、長嶋の時代であった。彼らのプレーを思い出しては自分の甘酸っぱい青春時代を重ね合わせていた。
歯科医になってからも彼らの時代は続き、二人とも毎日の激しい戦いと練習で、奥歯がぼろぼろになってしまったという話に関心を持った。
そうか、やはり力を出すためには奥歯をギュッと噛(か)みしめなくてはならないのだ、と思ったものである。
その後、多くのスポーツで同様のことが語られ、いつしかそれは世間の常識となった。相撲、ラグビーなどの格闘技、あるいは格闘技の要素の強いスポーツはもちろん、接触プレーのないゴルフでさえ飛距離を出すためにも噛みしめることが重要とされた。飛距離アップのためのマウスピースなどという、怪しげな商品も売られた程である。
ところが、噛みしめなくても力を出す人はいるらしい。いや、むしろ噛み合わせていない状態の方が、力を出すタイプの人がいるらしい。
北海道医療大学の石島勉教授の噛み合わせと背筋力の関係を調べた研究によると、日本人の約3分の2の人が奥歯を噛みしめると背筋力が最大値を示し、残りの3分の1はむしろ噛み合わせていない方が力を発揮すると報告されている。
かの有名なアメリカのプロバスケットボール選手だったマイケル・ジョーダンさんは、力を出すときでも口を開けたままだったそうだ。そう言えば、舌を大きく出しながら、相手の防御をかいくぐってシュートする写真が多く見られた。第一、もしそうでなければ、その度に舌を噛み切って血だらけになってしまったことであろう。野球に詳しい人ならば、一昔前に巨人軍に在籍していたガルベス投手も舌を出しながら投球していたことを覚えているだろう。
噛みしめると力を発揮するタイプの人は、えらの張った、四角い顔をしている人が多い。それは、噛む力を生み出す筋肉と顎(あご)の骨が発達しているからである。フーテンの寅さんみたいなタイプである。
ただ、噛む力が強いが故に奥歯、あるいはそれを支える骨、さらには顎の関節にもダメージを与えてしまうことが多い。従って、こういうタイプの人は歯を防御するためにも、ボクシングの選手がはめているようなマウスピースを歯科医院で作ってもらうのがよい。
王、長嶋派か、はたまたマイケル・ジョーダン、ガルベス派か、あなたはどちらのタイプですか?(東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長、次回は26日)
| プロフィール |
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安田 登 やすだ・のぼる
1969年東京医科歯科大卒。パリ大学留学、第一生命日比谷診療所、東京医科歯科大臨床教授を経て東京クリニック丸の内オアゾmc歯科医長。 |
(2007年10月12日 読売新聞) |