t.o.h.会員 歯科衛生士 小川 春香
私が歯科衛生士になった理由は、一言でいうと「自立した女性」に憧れがあったからです。ではなぜ衛生士かと言うと歯科関係の仕事に従事している親戚がいた事、私の祖母も歯科衛生士だった事が影響していると思います。そういう事もあって歯科衛生士を「女性の専門職であり、一生涯を通じて出来る仕事だ」と少し前から確信するようになりました。しかし、学校を卒業して実際に歯科医院で働いてみると予想とはかなりかけ離れていて、とてもタフな仕事なのだなと痛感し思いを新たにしなくてはと感じました。最初は与えられた仕事を一つ一つこなしていく事が精一杯でした。少しずつ診療の雰囲気に慣れてきた頃、患者さんへの歯科保健指導、歯科予防処置を任せてもらえる様になりました。それは、学生の頃の実習とは当然違い、何かしらで病んでいる方を相手にするので、責任は重く、患者さんにかける言葉の一つ一つにも、また患者さんに対しての表情や仕草にも気を配る必要がありました。 その中でも、私が保健指導をする事になった、一人の女性についてお話したいと思います。その方は、元々お口の健康にはとても関心の強い方でした。従って歯磨き好きで、朝・晩としっかり磨いていました。しかし、口腔内をみさせてもらって、愕然としました。それは予想に反して磨き残しが多くみられたからです。私は「磨けている」と「磨いたつもり」の違いを理解してもらう必要があると痛感したのです。しかしこの方は先ほども申したように自分のお口の健康には関心も高く、またそこそこの知識もあり、頭ごなしの言い方では自尊心を傷つけるだけでかえって逆効果だったのです。そうとも知らずまず普段通りに歯磨きを行ってもらい、その後、染め出しをして、汚れが落ちていないことを自分の目で確認してもらおうとしました。「歯磨き指導→染め出し→歯磨き指導→・・・」を繰り返すという学校で習った単純な指導計画を作成しましたが、なかなか思うようには結果が出せません。それどころか患者さんの反応や態度が日に日に変わり気持ちが離れてゆくのが感じられました。自分の口腔内に関心の高い方なので、口腔内の変化(汚れの落ちぐあい)を実際に自分の目で確かめて頂くのが一番だと思ったのですが・・・。そこで染め出して、汚れているところを見せて指導するというやり方をやめて虫歯の話や歯周病の話、歯磨き粉の話など一般的な当たり障りの無い話をするように心がけました。 しばらくはこんな調子で、指導とはいえないようなお話をするだけの時間を過ごしました。でも、本人も汚れの事を気にしていたのでしょうか、ある日染め出しをして下さいと本人からいわれてびっくりしたのを覚えております。その後はもう想像に難くありません、日に日にブラッシングは上達し、キレイに歯を磨けるようになりました。指導最終の日には、ほとんど汚れが染め出されませんでした。その方は「すごい!最初と全然違う!」と喜んでいました。又、その喜びは私の喜びでもありました。最後に「あなたで良かった」とも言って下さいました。その言葉を聞いた時、今まで張りつめていたものがとれ、一気に肩の荷が下り、感動が胸いっぱいこみ上げてきました。 今では、幅広い年齢層の方の指導をやらせて頂いていますが、毎日、患者さんと接する事でたくさんの事を学ばせて頂いています。これからも、診療室のスタッフの皆さん、患者さんはもちろんの事、色々な方々との出会いを大切にし、歯科衛生士として、人間としても成長出来る様、そしてまた人から愛される歯科衛生士を目指してがんばらなくてはと思います。
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