■むし歯になってしまったら
人工物より歯が命

歯科医院に来院する患者さんのむし歯が原因と思われる主訴には、大きく分けて2つあると思います。1つは、歯の実質欠損、修復物の脱落(再治療)、それと痛みです。
歯科医院でむし歯の治療(詰め物)をしてもらって治ったはずなのに、しばらくするとまた脱落して来院する。「治したはずなのになぜ・・・?」なんて疑問に思った方は、意外と多くいらっしゃるのではないでしょうか?歯科医師にとっても一度治したところにトラブルが起こり、再治療することは不幸なことであるばかりか、不名誉なことですから、脱落しないように歯を削る事に身を費やしてきことは否定できません。
またメーカーも脱落防止のために接着材の接着力を強くすることに努力してきましたが、期待したほどの効果を上げることができませんでした。
そんなところへ「スーパーボンド(4-META/MMA-TBBレジン)」という接着力の高い接着材が出てきましたのでセンセーショナルな「接着」ブームが到来しました。(事実歯科矯正ではこの材料の登場によってD.B.S.(Direct Bonding System)
という方法が確立され、矯正装置の装着がもたらす審美的な障害がかなり改善されましたし、矯正治療自体もかなり簡素化されました。)この材料があれば今まで難しいと思われていた形成(歯を削ること)も、もっと簡単になり新しい修復法が誕生すると期待されていました。
このころ歯科医師が考えていた「接着」とは、修復物を脱落させない手段すなわち維持力を増強するだけの手段で、歯科医師が自ら患者さん達の歯に障害を与えているという認識は残念ながら無かったといえます。
すなわちあくまでも修復物ありきという前提がそこにあったわけです。
しかし私たち中林グループ(あなたの健康21「歯と口の健康を守ろう会」)が訴えたかったことは終始一貫して「天然歯を守る、歯を削らない」ということでしたので、そこには大きな認識のずれがありました。
当時一世を風靡した接着ブリッジも程なくその臨床経過に問題(種々な原因による脱落)が生じ下火になって行きました。そこで修復物が脱落しないようにくっつける接着と中林グループが提唱している「接着」を明確に理解してもらうために後者を「超接着」と命名し従来の「接着」と区別したわけです。

歯を削るのは、基本的にはむし歯の部分だけなのです。修復物の脱落防止のために歯を削るのではありません。
従ってこの「超接着」という技術を利用すれば仮に修復物がとれたとしてもその下の歯は守られていますし、もう一度つけ直せば元通り使える事もあります。
大切なのは自分の歯です、修復物(人工物)ではありません。この点をしっかり理解して欲しいと思います。
むし歯にならないようにすることが最も重要なことです。このことに誰も異論はないと思います。しかし私たち人間は悲しい哉、一度痛い思いをしないと真の理解ができない事がたくさんあります。しかも「喉元過ぎれば熱さを忘れる」なんて事もありますから何度も痛い思い繰り返している方もいるのではないでしょうか?(こういう方には入れ歯が待っていますよ。)
歯科医院に来院する患者さんの主訴の2つめに「疼痛」があります。時には腫れも伴ったりして本当に気の毒です。こんなになる前に何度か身体(歯)がサインを発していたのに無視していたのでしょうか?歯がひどく痛む場合は、むし歯が大きくなって通称、「神経」と呼ばれている歯の中心にある心臓部にダメージが及んでいるからです。
そういう場合何をするかというと神経を除去するわけです。麻酔をしてからするので痛みはありません。ただ麻酔が切れると痛みが発現することがありますから、鎮痛剤なんかを服用します。死ぬほどの痛みもすっかり無くなると晴れ晴れとした気持ちになり、とても幸せそうです。でもこれは本当に治療なのでしょうか?神経を除去した歯に土台をたてて義歯(クラウン)をかぶせる。
見た目もきれいなったし、噛めるようになりました・・・でも神経を抜いてしまった歯は生きてはいません。あなたの不注意が歯を殺してしまったのです。
歯医者さんには責任はありませんが、あなたの歯はただの器(うつわ)になってしまったのです。生きている木はどんなに細くても折ることは難しいのに、太くても立て札になって雨風にさらされている木は、たやすく破壊できます。
歯もそれと同じなのです。私たち歯科医も神経を抜くなんて事がないように努力します。
皆さんも歯が痛くなってから歯科医院に行くなんて事は決してしないように心がけて下さい。
次回はこの歯を守るための新しい技術(治療法)についてもう少し掘り下げてお話しします。