・第83回IADR見聞記

中林宣男

83回IADRの学術講演会と展示会が3月9-日−12日の間ボルティモア(米国・メリーランド州)で開かれた。毎年世界中から歯科関連の研究者が一堂に会して成果と友情を交換し合うお祭りの様な大集会である。日本人として特筆すべきことは東京医科歯科大学の黒田敬之名誉教授がIADR会長に選出されたことであろう。これは先生の研究成果と人格者としての人気のおかげである。

日本では2001年の6月に幕張メッセ(千葉県)で開かれた。これに参加すると、どんな研究が現在世界的に興味をもたれている研究か、自分たちの研究の位置づけ等を肌で感じとれるし、有名な教授たちや研究者の顔を直に知ることもできるし、知り合いになるチャンスでもある。自分の主義主張を世界で認めてもらうにはIADRに出席し、報告を続けることが大切である。特に自分の報告に聴衆の集まり具合で、興味を持ってもらえているかを自ら評価もできる。人気の映画や演劇にお客さんが集まるかと同じである。外国の人は自分の興味のない講演は聴こうとしないし、ポスターでも通り過ぎていってしまう。市場と同じで、人だかりのしている場所は人気のあるところである。中林はBisGMAとコンポジットレジンの開発者で有名なボーエン博士(上の写真,右から二人目)の強い勧めで、70年代後半から出席する努力を進めてきた。

 中林は「マイクロリーケージと2次齲蝕に罹患しない修復法という」昼食を楽しみながらの勉強会なる企画に話題を提供した。鈴木司郎先生(米国アラバマ州立大学)と入江正郎先生(岡山大学大学院)も話題提供されていた。皆さん参加者にそれぞれ満足を与えていたように思う。中林には参加者全員から感謝の言葉が述べられた。

 歯科医学にとって、人類の歯と口の健康を守るうえで、エナメル質に穴を開けないこと(象牙質を露出させない:これは酸に弱い象牙質を口腔内常在微生物が作り出す乳酸により脱灰させてはいけない)が大切である。不幸にして象牙質が露出した歯を、それ以上口腔内で脱灰されないようにする科学が求められている(残念ながら今の歯科治療では、年をとると入れ歯の世話にならざるを得ない)。何故、歯を治療し、されると歯は痛みを訴えるか。これは刺激が直接歯髄を刺激するためであり、修復物の脱落防止によっては解決できないのである。これまでの歯科医学に欠けていた「歯を削ったらそこにエナメル質の機能の一つである“歯を守る”機能を歯科医師は与える」でなくては、歯は死んでいく運命を負ってしまう。歯科医師を初め一般の人たちもエナメル質の重要性を理解して欲しいのである。

樹脂含浸層の評価に疑問があるという研究の流れの中で、接着歯学が目指した修復物の脱落を解消する「象牙質に接着する材料開発」という目標をさらに進め、乳酸不透過性を確認した樹脂含浸層(これは中林が定義してきた歯を守る安定な樹脂含浸層である)は露出象牙質を口腔内で乳酸の攻撃から守る上で必須であり、これの理解を広めることは、私たちの健康21「歯と口の健康を守ろう会」の趣旨に沿った活動でもあることを、歯科関係者を始め世界中の人々が理解してくださると、会長としてうれしく思う。